噂の男

噂の男を観てきました。ず〜んときましたね…。この舞台の前に観たのが宇宙戦争だったので、その分重〜く感じたのかもしれないけれど、この舞台自体はそんなにヘビーではないよな。小林さんの作る勧善懲悪みたいな作品は終演後に「良かった!」とかプラスの感情に持っていけるけど、こういう舞台は重力がいつもよりかかっている感じになります。以下ネタバレ含みますのでご注意を。
細かな伏線が(難しいものではないけれど)張られていて、終末にむけて繋がっていきます。アキラを想うモッシャンの気持ちも、モッシャンを想うアキラの気持ちも、アキラを想う鈴木の気持ちも、アヤメを想うトシの気持ちも理解できた。


パートナーとか愛するひとに対する想いの強さが、時にはひととして間違った方向にいってしまうというのは、無いことではないと思う。大人になると変なプライドだとか、損得だとかいろいろな感情が入り交じり、本当は素直な気持ちをぶつけていたら結末は違うものになっていたかもしれない。会話の中や仕草にその素直な感情が見え隠れしてるのかもしれないけれど、相手の気持ちとは違う場合とか、自分の感情しか見えてなかったりとか、その気持ちに気付かなかったり、気付かないフリをしたり…
言いたい事を言えたり、気持ちを伝えたからって思い通りになるとも限らない。それは大人なら誰もが知ってる事。
そのどうにもならない感情っていうのは、とても扱いが難しい。自分の中で消化できない想いは、形を変えて嫉妬や怒りになったりもする。
だからその感情にばかり囚われると父の恨みに支配された加藤(八嶋さん)のように想いを果たしても「すっきりしない」こともある。それが悪いことだということも分かっているし、なにより失ったものはもう戻らない…。

山内さんはやっぱり面白かったし、八嶋さんも独特の雰囲気で思わず目で追っちゃうし、堺さんも情けなくもかっこよくて良かったけど、橋本じゅんさんは圧倒的だったな。
私が舞台を観るときには出演者も重要なウエイトを占めてるので、何度か観たことのある役者さんが多かったけど、山内さんとかはハマり役だったんじゃないかな。