無銭優雅

無銭優雅

カバーをめくると深い紫色。ストーリーから連想するのはやわらかな水色。
他人から語られるたいせつなひとの真実って、なんであんなに不安を掻き立てるのでしょう。知らなかった自分に?言わなかった相手に?聞かなかった自分に?真実を知る他人に?そのどれでもないような気もするし、どれもそうな気がする。1番近いのは「言ってもらえなかった自分」になのかもしれない。

山田詠美さんの作品を久しぶりに読みましたが、こんなおだやかなストーリーも書くのね。他人に牙をむいても愛するひとを愛するような刺々しさはなく、愛するひととの関係を築いていくために心を使う、愛情を使う。そういうのってとても素敵だ。

ラストにかけては心が揺らいでしまって、涙が溢れそうになりました。