佐内さん

だれかのことを強く思ってみたかった     集英社文庫

だれかのことを強く思ってみたかった 集英社文庫

文庫を手に取ってしまったことを少し後悔しました。角田さんと佐内さんが一緒に歩いてできた作品とのことなのですが、写真とストーリーが寄り添っているわけではなく、それぞれに独立した世界を広げています。

おんなじ道を歩いて、おんなじものを見ているような気がしているのは私だけなのかもしれません。当たり前のように相手にも感情はあって、「今日は楽しかったね。」ということばのさすところは違っていることの方が多いのでしょう。だいすきなひとと過ごした時間を、あとから逢わせてみると、ふたりぶんの記憶として刻まれていくので、楽しいのかもしれませんね。


佐内さんの写真はあの独特のカラーが魅力だと思うのですが、モノクロも多かったのは少し残念でした。佐内さんの目にはどう映っていたのか、というのが気になるところでもあります。仕方がないので、淡くきらきらとしたひかりに自分の記憶の空の色を佐内さんの写真と逢わせてみようと思います。